アスレティックトレーニング備忘録

米公認アスレティックトレーナーがスポーツ傷害、リハビリ、トレーニングなどについて不定期で書いてます。

だれがリスクテイカーになるか?

こんにちは。イマザキです。

 

ここ最近日本ではこちらのニュースが話題になっているという事で遅ればせながら個人的に思うところを述べたいと思います。

 

headlines.yahoo.co.jp

 

皆さんご存知かとは思いますがニュースの概要を述べると、高校野球の岩手県大会決勝で大船渡高校がエースの佐々木投手を温存したまま試合に敗れ甲子園行きを逃したというものです。佐々木投手は4回戦で194球、前日の準決勝で129球を投げており、彼のコンディションを案じた国保監督の采配に対して野球界内外から様々なコメントが寄せられる事態になっています。

 

今回のニュースに対して僕が抱いた事として、誰がリスクテイカーになるのかという事です。これはスポーツに限らずすべての事に言えることですが、将来のことに対して絶対というものはありません。特にスポーツの勝敗やケガに関しては結局のところ確率論になります。(でなければブックメーカーは存在しませんし、ここまで障害予防に関して研究が行われることはありません)

 

今回のケースでは2つのリスクが存在します。一つ目は負けるリスク。そして二つ目はケガをするリスクです。

 

まず一つ目の負けるリスクです。僕は野球の指導者でもスカウトでもないので大船渡高校と花巻東の実力差がどの程度あったのかは分かりません。普段、監督は少しでも負けるリスクを減らす為によりよい戦力を揃えようとします。今回、一部で監督に苦情が寄せられているのはこの努力を怠ったという言いがかりなのでしょう。

 

2つ目のケガのリスクですが、これはそのままですが野球をすることでケガをするリスクです。これについては以前にもブログに書きましたが、投球回数の増加、また疲労が溜まった状態での投球により肩や肘のケガのリスクは上昇します。野球のケガでの最悪のケースとして、もしUCLを断裂してしまった場合復帰には2年近くかかります。

 

zaki-at.hatenablog.com

 

 

今回のケースでは国保監督は負けるリスクと佐々木投手がケガをするリスクを比べて、負けるかもしれないリスクを取ったのでしょう。さて本題は誰がリスクテイカーになるかという事でしたが今回のケースでは国保監督がリスクテイカーになったのではないのでしょうか。(もちろん佐々木投手自身も悔しい思いをしたことは間違いないと思います。)

 

よく見られるケースとして投手がケガを押してプレイしたり、投球過多の結果ケガをしてしまったりするケースをみます。こういうケースでは選手がリスクテイカーになっています。なぜなら、選手がケガをしてしまった場合でも監督はそこまで責任を追及されることはないからです。(少なくとも学校に100件以上の苦情の電話が来ることはありません)。なのでケガによるリスクを享受するのは選手自身という事になります。

 

さて今回のケースで国保監督は自身がリスクテイカーになることを選びました。これはなかなか出来ることではないと思いますし、称賛に値すると思います。自身の都合を優先してまだ将来のある高校生にリスクを負わせるのは間違っていると思います。

 

ではすべての監督が国保監督のように自身がリスクテイカーになることが出来るかというと難しいと思います。現場では保護者や学校からのプレッシャーもありますし、選手自身もまず目の前の試合に何としても勝ちたいと思うはずです。そういったプレッシャーの中でこのような判断を下すのは非常に勇気がいりますし、よほど冷静でいなければできません。

 

僕は個人的に高野連がリスクテイカーとなり、球数制限などを設けルールとして投球過多を防ぐのが良いのではと思います。この場合のリスクは、私立などの選手層が厚いチームが有利になってしまう可能性があることや競技性が変わってしまう可能性があることでしょうか。

 

現状、完璧な制度は無くどこかがリスクを取り、うまくいかなかった場合はケガに苦しんだり、非難を浴びたりします。これまでは選手がリスクテイカーになることが多々ありました。そして今回のケースでは監督がリスクテイカーになりました。僕としては彼ら個人にリスクを背負わすのは荷が重すぎるのではないかと思います。なので今後、高野連が非難の矢面に立つ覚悟でリスクを取っていって欲しいなと思います。

 

まとめ

今回はリスクテイカーという言葉をキーワードにこの問題を見てみました。高校野球の問題は色々複雑なので解決するのは難しいと思います。高野連にはもうちょっとリーダーシップを発揮して改革を行ってほしいと思います。あと、今回の大船渡の敗戦について学校にまで苦情の電話を入れるのはどう考えてもおかしいですし、何より精いっぱい戦った大船渡と花巻東の選手たちの失礼です。

 

それでは。