アスレティックトレーニング備忘録

米公認アスレティックトレーナーがスポーツ傷害、リハビリ、トレーニングなどについて不定期で書いてます。

日米のATの年収を比べてみた‼

こんにちは。イマザキです。

 

先日ツイッター上で日本スポーツ協会(JSPO)による日本のトレーナーの平均年収について話題になっていました。そんな折、ちょうど今月のNational Athletic Trainers’ Association (NATA)の会報でも米国のアスレティックトレーナー(BOC-ATC)の年収調査の結果が載っていたので両者を比べてみようと思います。

 

なお今回、JSPOのデータは日本スポーツ協会の第一回日本のトレーナー実態調査を、BOC-ATCのデータはNATA 2018 Salary Survey Resultsを参考にしました。残念ながらNATAのデータは会員のみが閲覧可能なようなので、興味のある方は知り合いのBOC-ATCの方に聞いてみてください。

 

1、サンプル
今回の調査の対象になった人は以下の通りになります。


JSPO:

日本国籍を持つ 20 歳以上で以下の①②③のいずれかの条件を満たす人:
① 日本国内外に居住する AT 資格者保有者
② 職業としてトレーナー活動を行っている人(資格の有無にかかわらない)
③ トレーナー活動を何らかの形で行っている人(資格の有無にかかわらない)

 

NATA:
BOC-ATCの有資格者。

 

回答者の数はJSPOが1294名 (男性:78.7%、女性:21.3%)、NATAが9545名 (男性:55%、女性45%)になっています。これはあくまで今回の調査の回答者数ですが、日本で活躍されているトレーナーの方はまだ圧倒的に男性の方の方が多いのかなと感じます。

 

2、最終学歴
最終学歴はJSPOが博士:5.1%、修士:15.3%、学士:33.8%、短大1.7%、専門学校:43.2%、高校:0.9%に対してNATAは博士:8%、修士:68%、学士:23%、その他:1%になっています。

 

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そもそもBOC-ATCは認定を受けた大学を卒業しなければ受験資格が得られない為、BOC-ATCの最終学歴は学士以上になっています。また、近年の傾向から多くのATが大学院まで進んでいます。一方で日本の場合、大学または専門学校を卒業後、そのままトレーナーとして働く方が多いようです。

 

3、平均年収
さていよいよ平均年収です。
以下のグラフはJSPOの年収の分布です。

 

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1万円~100万円の範囲がボリュームゾーンになっています。大まかに見積もって全体の平均で言うと340万円ほどでしょうか。

 

一方でNATAの方はというと、こちらは収入の分布は載っておらず平均のみの記載でした。学歴ごとにまとめたグラフが以下のものになります。

 

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2月28日現在で1ドル110.87円ですから全体の平均で言うと634万円ほどでしょう。日米のトレーナー間では平均で年間300万円ほどの収入差がありそうです。

 

3、感想
正直に言って最初にJSPOの年収の分布を見たときはショックでした。というのもJSPO-ATの資格試験は非常に難易度が高く、僕の知っている範囲の日本のトレーナーの方も皆さん非常に優秀だからです。それなのに、年収100万円に満たない人がこれだけいるのかと目を疑いました。

 

しかし、JSPO-ATの前身の日本体育協会公認アスレティックトレーナーの養成制度が始まったのは25年前の1994年です。一方、NATAが出来たのは1950年です。アスレティックトレーナーという職業を制度化し始めてから倍以上の時間がたっているわけですから、収入にも差が出てしまうのも当然だと思います。

 

昨今、スポーツ現場での安全性が問題視されていることからも、アスレティックトレーナーの職業としての需要はあると思います。今後日本のトレーナー業界もアメリカに追いつく日が来るといいなと思います。

 

まとめ
今回はトレーナーの年収について少しまとめてみました。皆さんはどう思われましたか?


正直、日本でもアメリカでもアスレティックトレーナーという職業は大金を稼げる職業ではありません(もちろん例外もいますが)。


今回のデータでは平均で倍近い年収の差が日米で見て取れましたが、これはNATAがコツコツとATの価値を広めてきた結果です。日本でもようやく実態調査が行われるなど、まとまった動きが出てきたので、第二回、第三回の調査の際にはこの収入分布も改善してるといいなと思います。

 

それでは。